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ケーブル物語

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2014年1月20日の営業リポートより
本メールは酒井氏がドイツのスピーカーとフィデリティゲートのスピーカーケーブルを持ってセールス活動した時の記録です。


関口 様
お世話になっております。0泊3日の弾丸ツアーで大阪行って来ました。
関口さん懇親?、渾身のケーブル良かったです。この感動を忘れない内に感想を書きます。
当日、この前案内した河口無線に紹介されていた機材でSTEP25を鳴らしましたが、お客さんは口々に"美しい"サウンドだと述べてくれました。無論、これは関口さんのケーブルに負うところが大きいです。昨年11月にプレゼンした経験からすると、"皮が一枚剥けた"感じです。
スピーカー本来の音を引き出しているのは確かです。またバックグランドノイズが各段に押さえられています。この辺はみんなビックリです。
試聴会の途中、関口さんのケーブルを紹介し河口無線に据付のケーブルと関口さんの聞き比べを行いました。音源はビルエバンス・トリオライブと五輪真弓です。先ず、ビルエバンスですが、関口さんの言った通り、ソロパートの細かいアドリブまでウッドベースの輪郭が格段リアーです。特に普通なら聞き逃しそうな微小な音まで、音程が忠実に再現されていました。また、五輪真弓ですが、女性特有の伸びやかな歌声までストレスなく再現されていました。五輪真由美って再現が難しくスピーカー泣かせなんですが大したものです。この点に関しては、複数のお客さんも感じていたようです。
ただ反省点として、今回はあくまでスピーカーの試聴会ですから、あまりしつこくケーブルを褒めると、"じゃ、これってスピーカーの音じゃないの"と言うことになり、また都度、ケーブルを付け替えなくてはならず、流れを切られるのを嫌がるお客さんもいました。やはり、ーブルはケーブルとしてのプレゼンを行うべきです。
で、問題点があります。代理店に値段を聞かれ、30~40万円位と仮に答えましたが、関西ではこの価格帯になると殆ど売れていないそうです。
理由の一つは、関西ではかなりのマニアがケーブルを自作するそうです。
河口無線にも自作用ケーブルが置かれており、高いもので2,000円/メーターまでありました。ただ、関東には高級ケーブルのマーケットがあり、数十万のケーブルが売れるそうです。
試聴会の最後にあるお客さんが、"良いケーブルだね。これって銅線の捻り方がノウハウでしょ。商品化が楽しみだね"と言ってくれました。”読まれている”って感じです。
次は来月の名古屋オーディオショウですが、今回の経験を踏まえ音源まで含めてどんなプレゼンが良いのか検討する必要がありますネ。ではまメールします。
以上
酒井
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酒井様

2014年1月21日
詳細なリポートをありがとうございます。
今回、酒井さんの提案と販売店への意見具申により、貴重な情報収集が出来感謝しております。

>"皮が一枚剥けた"感じです。
>またバックグランドノイズが各段に押さえられています。この辺はみんなビックリです。

”皮が一枚剥けた”というのは、バックグランドノイズが抑えられていることと相関関係(S/N比)にあり、弊社ケーブル最大のセールスポイントです。とくに、最近のオーディオ再生環境は、エアコンのインバーターノイズ、携帯電話、PC、LEDランプ、電子レンジからの電磁波や、オーディオのデジタル機器(CDプレーヤー)などから直接放射されるノイズ、電源から回り込むノイズなど様々で1960年代までの環境とは比べようもないほど劣悪な環境となっています。

これらのノイズ環境の対策は、一般的には、スピーカーケーブル網導体でシールドすることですが、私が実験したところでは、音に伸びやかさが無くなる傾向にあり、あえてノン・シールドでノイズ対策を行っています。具体的には、一部のマニアが指摘されている通り、ケーブルの撚り対構造の多重化によりノイズをキャンセルしています。 もちろん、撚り対構造にも弱点があり、2本の導線の間隔(実際には外皮による絶縁体の厚さ)により静電容量を持つため、細かいピッチで撚りすぎると高域特性が落ちてきて(このため、スピーカーケーブルは信号に対しローパスフィルターとしての性格を持ちます)、楽器などの倍音成分の再現性が劣化してFM放送とAM放送ぐらいの差が生じます。
多分、現在の試作ケーブルが最良ですが、今以上に改善するため、次のバージョンでは、撚り対構造の多重化はそのままに、電磁シールドでなく、非磁性体による電界シールドのできるフィルム材を見つけましたので、組み合わせて試作するつもりです。もし、完成すれば世界初となります。

>ソロパートの細かいアドリブまでウッドベースの輪郭が格段にクリアーです。
>特に普通なら聞き逃しそうな微小な音まで、音程が忠実に再現されていました。
>また、五輪真弓ですが、女性特有の伸びやかな歌声までストレスなく再現されていました。
>五輪真由美って再現が難しくスピーカー泣かせなんですが大したものです。
>この点に関しては、複数のお客さんも感じていたようです。

スピーカーケーブルは前述したとおり、ローパスフィルター機能のほか、様々な要素が組み合わさり、音質に影響を与えています。低音域の駆動力を向上するには電線はある程度の太さが要求されますが、ある限界を超えると高い周波数の表皮効果により導体の有効断面積が小さくなり特性が劣化します。改善策としては、リッツ線といって出来るだけ細い線材を1本1本に絹を巻いた線を撚り合わせるという方法(各々の導線は絶縁状態)がありますが、試作ケーブルは、この方法を単純化して洗練させたものです。銅の単線は、スピーカーを駆動する電力線でもあるので、最低限の太さが必要です。その単線に対し、本当はリッツ線のように絹がよいのですが、絹は吸湿性があるため絹に近い誘電率を持つテフロン素材を使用したノードストの単線を使っています。つまり、銅の適度な太さの単線素材を複数本撚り対構造にして、右回転や左回転を組み合わせノイズキャンセルしています。
完全にノイズをキャンセルするには、撚りのピッチを変えて組合す方法もありますが、これをすると、実際の導線の長さが微妙に変わってくるため、各線に流れる電流に時間的な遅延(位相差)が生じます。そのため、試作ケーブルでは、位相差による遅延を嫌ってこの方法は採っていません。多分どこのケーブルよりも、音像の定位が明確に決まっているはずです。

ほかにも、スピーカーは、ボイスコイルが電気信号で動くだけでなく、磁気回路からの反作用の影響で、起電力が絶えず発生(スピーカーは発電機でもある)しており、この起電力がアンプの出力端子からNFB(負帰還)回路からアンプの前段に戻されるため、音声信号を濁らす(変調される)ことになります。そのため、対策として簡単なのは、NFBを使わないアンプを用いることですが、直熱型三極真空管でもなければ、一般的な半導体アンプでは特性が悪すぎてNFB無しでは使い物になりません。起電力の吸収方法も考えられるので、これらについては、うまい方法がないか検討中です。

いずれにしましても、試作のスピーカーケーブルで、どのスピーカーであっても最良のポテンシャルを発揮できると思いますので、オーディオフィジックの試聴用リファレンスケーブルとして採用されることを希望いたします。

>30~40万円位と仮に答えましたが、関西ではこの価格帯になると殆ど売れていないそうです。

これは、私もそのように思います。自分が購入する立場であれば、2m前後の電線にアンプと同等以上の金額を払えるか?疑問です。

>試聴会の最後にあるお客さんが、"良いケーブルだね。これって銅線の捻り方がノウハウでしょ。
>商品化が楽しみだね"と言ってくれました。
>”読まれている”って感じです。
良い評価をしていただけて嬉しいです。
会社を設立した目的は、温故知新で、本当に良い技術を発掘再現し継承して行くことであり、経営者になることが目的ではないからです。そのためには、酒井さんや石塚さんのような力のある人々の協力が必要です。
>次は来月の名古屋オーディオショウですが、今回の経験を踏まえ音源まで含めてどんなプレゼンが良いのか検討する必要がありますネ。

是非、群馬県の昭和村に来てください。
3人でオーディオフィジックのスピーカーを販売するにはどのような協業ができるか話し合いましょう。
オーディオを通じて、日本の文化を変えて行きましょう。

今後もよろしくお願いいたします。
有難うございました。

フィデリティゲート株式会社 関口直秀


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