7 ケーブルのバーンイン(エージング)は、なぜ必要か?
また、ワイヤー自身もツイスト加工する段階で、物理的な応力を受けます。
これらの応力による歪は、時間経過と共ともに、自己回復するのですが、それには長期間(一説によれば約30年)を要します。Linnの初期モデルのLP12ターンテーブルの場合、金属の切削加工では、1工程進めるごとに、数か月放置して応力歪が開放されてから次の金属加工に進めていたそうです。これなども、金属の加工によって受けた応力歪を取る手段の一つです。電線の場合は、その歪を積極的に取り除き金属の組成(結晶粒)を整え安定させるのがバーンインです。それには、ある程度の時間を掛けて多くの周波数領域で通電してやる必要があります。
バーンイン(エージング)によるケーブルの変化は、端子部と導体ワイヤーおよび絶縁被覆(誘電体)の三つに影響が出ます。
端子部は、ハンドプレスによる圧着段階で曲げなどの外部応力が加わることを避けることはできません。
この際、歪み欠陥と呼ばれる乱れが金属組織に生じる場合があります。
各製造工程で受ける応力による歪みのほか流通過程や配線時にも同様に外部応力が加わり歪みが発生します。
特に弊社の様なツイストケーブルには、バーンインに時間が必要です。 また絶縁被覆はコンデンサーの誘電体でもあるため、ケーブル製作するうえで、誘電率の低いものを選択していますが、どうしても誘電体によるコンデンサーの影響をゼロにはできません。
この絶縁被覆の影響を極力回避するために、ホットとコールドを分離させ、一定以上の距離を取って螺旋構造で多重化していますが、ホットとコールドの間に絶縁被覆(誘電体)が入るため、電荷が溜まり飽和するまで安定しません。この絶縁被覆の電荷を安定させるためにもバーンイン(エージング)が必要になります。特に多重化傾向の高い弊社のケーブルやキンバーケーブルなども同様にバーンインに時間が掛かります。また数週間から1か月以上通電せずに放置していると、電荷が抜けていくため、音出し直後は、安定した音になりません。経験的には最低30分、できれば2時間後辺りから、本領を発揮します。アンプも半導体アンプの場合同様な傾向にあります。電流が流れることによってエージング=セルフ・アニール現象が促進され残留歪が減少し組織が健全に回復して高音質化させることができます。バーンインは、およそ100時間から多い時は250時間必要になる場合もありますが、その場合もリニアに変化するわけでなく、途中時間経過する段階では寝ぼけた音になる場合もあり多少の忍耐が必要です。
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