■デジタルケーブルで発生する伝送ジッターについて
前回のケーブル物語:デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?(その3)で、
デジタルデータそのものは、ビットパーフェクトでデジタル信号そのものは劣化しないと考えてよいことが分りましたが、ケーブルで発生するジッター(時間軸の揺らぎ)によりDAC側から見た同期タイミングの時間軸の揺らぎによりデジタル信号をアナログ信号に変換する際の変換精度が影響を受けて正しく変換されないことが分りました。
これを「ケーブル誘導」ジッタ-と呼び、ケーブルを変更すると波形がわずかに上下に移動すると(ビットが変化すると定期的に変化します)、水平基準線と交差する正確な瞬間も変化し、受信機から見たときにタイミングが変化することがわかります、ケーブルを変更すると、上記の波形が変更され、それに伴って、外部DACに送信されるジッターも変更されます。つまり、D/A変換のデジタル部分で信号の劣化は無くともアナログ部分のジッターによりDAC側のシステムクロックの同期に影響が出て結果としてD/A変換が正しく行われないことが信号劣化の原因だったということです。
極端な例えですが、音楽演奏に於いてすべての器楽奏者が勝手に*シンコペーションして演奏しているような揺らぎが絶えず不規則に生じていることになります。☚リズムに不規則性が生じて下記シンコペーションの*(3)弱拍部を延長したような変化(基本リズムの揺らぎによって音楽が絶えず変調されることを意味します)2023-01-24追記
*シンコペーション:音楽用語。切分音(せつぶんおん)と訳される。アクセントや拍節の正規のパターンを変えることによって、リズムに不規則性(強拍部と弱拍部の位置の交替)を生じさせる効果のことで、それには主として次に示すような三つの方法がある。(1)弱拍部にアクセント記号をつける方法。(2)強拍部を休止する方法。*(3)弱拍部を延長する方法。
シンコペーションは古く中世の音楽にもみられるが、その場合は対位法による音楽のなかで各声部を際だたせるために、一声部ごとに用いられた。それに対し18世紀以降の音楽では、シンコペーションを全声部にわたって同時的に用い、今日的な意味での効果が意図されるようになった。なおシンコペーションは、ブルースやラグタイムやジャズなどの基礎ともなっている。[日本大百科全書(ニッポニカ)「シンコペーション」の解説より]
(その2)の復習になりますが・・・
①オーディオ特性に直接影響を与えるのはデジタルオーディオのマスタークロックである。このクロックは、D-A変換回路やD-AコンバータIC動作に用いられ、PCM信号の基準サンプリングレート(fs)に同期している必要がある。D-AコンバータICの変換精度(オーディオ特性)は、このオーディオマスタークロックのジッターに影響される。
②SPDIFの伝送クロック上のジッターは「伝送ジッター」であり、オーディオ機器内部のクロックとは直接には関係無い
D-A変換性能に直接影響するジッターは、ピリオド(周期)ジッターである。
デジタルオーディオにおいて「クロックジッター」を表現する場合は、「オーディオマスタークロックの立ち上がりピリオド(周期)ジッター」である。立ち上がりである理由は、一般的なD-AコンバータICの変換精度に影響するクロックは、立ち上がりタイミングのみで決定されていることによる。☚仕様
CDプレーヤーやケーブルなどアクセサリで音が変わる理由は、CDの読み取りなどデジタルビットの影響は一切なく、デジタルをアナログに変換する際のジッターの差異と、最終的なアナログ出力に影響を与えるアナログ回路側の影響である。
■デジタルオーディオは、すべてがデジタルではない!
最初に理解すべきことは、デジタルオーディオは完全に「デジタル」ではないということです。
タイミングが重要である理由は、サンプリング理論では、出力サンプルが最初にアナログからデジタルに変換した正確な時間と一致することが義務付けられているためです。
この原則に違反すると、歪みが発生します。
DACを駆動するタイミングを完全に正確にすることはできません。ある程度の変動は常に存在します。これを「ジッター」と呼びます。
これは、DACへのタイミングソースが理想値からどれだけ変化するかの測定値です。ジッタ-の影響は、その振幅(振幅)、周波数(ジッタ-とソースオーディオの)、およびスペクトル/波形(変動の仕方)によって決まります。
ジッターの音楽への影響は、音楽のすべてのトーンを変調することです。
DACのタイミング変動が5億分の1秒を超える場合、オーディオサンプルの1ビットを圧倒するのに十分な歪みが発生します。(ここまで、その2で公開済み)
■再びS / PDIFデジタルオーディオケーブルを例に取ります。
オーディオビットは、一連の「1と0」としてその上を移動します。
しかし、
パルスがゼロからゼロ時間で最終値に達する完全な方形波を再現できるケーブルはありません。☚出来る限り周波数特性に優れた広帯域でハイスピードな(方形波の立ち上がりが良く波形が鈍らない)ケーブルが求められます。
■S/PDIFデジタルオーディオケーブルの誘導ジッターを減らす。
ジッター(時間軸の揺らぎ)を極力排除するにはどうすればいいのか?
一般的な75Ωの同軸ケーブルは、絶縁体(誘電体)やシース(塩化ビニール)に問題があり
そのままでは、理想の同軸ケーブルからは程遠いことが分りました。
先ず、絶縁体は*誘電体でもあるため、空気層を多く含んだ発砲ポリエチレンや架橋ポリエチレンが良いことが分りました。探すとありました。しかし、残念な事に編組シールドの上に被せられたシースの材質は高周波の領域での利用しか考慮していないため、対候性を考慮して塩化ビニールを使用しているものがほとんどです。
塩化ビニールが良くないのは、*周波数依存性を持つ材質のためです。
また、同じ75Ωの特性インピーダンスでも3C2Vと5C2Vでは、同軸コアの絶縁体の太さにより信号ロスの点で5C2Vが有利です。
編組シールドは信号を流すときにリターン側になるため、無メッキの銅線が良いです。
ケーブルに電流が流れると導体である電線はもちろん絶縁体にも僅かですが電流が流れます。絶縁体は電流が流れないのでなく流れにくいだけであることを認識すべきです。
つまり、絶縁体(誘電体)に電圧が印加され微小であっても電流が流れると誘電体に分極(分子内で電子の偏り)が生じ(誘電分極)静電気が充放電を繰り返します。
静電気が充放電を繰り返すことは、信号が変調されることを意味します。これがケーブルによる誘導ジッターの一要因であると考えます。この絶縁体(誘電体)の材質が塩化ビニールの場合、周波数により静電容量が変化するため信号伝送路として考えると好ましくありません。対策としては、塩化ビニールのシースを剥ぎ取り誘電率の低い架橋ポリオレフィンの熱収縮チューブに置き換えることで実現したのが、フィデリティゲートのDIG3000デジタルケーブルです。また、ケーブルに外部から物理的な振動や力が加えられた場合もケーブルの静電容量が変化するため、ケーブルは硬くシースで締め上げなければなりません。そのシースも誘電体であるためPETスリーブを3重に重ね合わせることで空気絶縁に近い状態で同軸を強固に締め上げています。
ケーブル物語:デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?(その1)の写真が実装例です。
こうして、1本1本手作りされたデジタルケーブルは、オーディオマニアに「ケーブル1本でこんなにもかわるものか!?」と言わしめるほどの高忠実度なデジタルケーブルが出来上がります。
*誘電体(絶縁体):誘電体は直流に対しては絶縁体ですが、交流は通します。それも周波数が高いほど良く通るようになります。
絶縁体の*周波数依存性:誘電率はいくつかの物質によって構成されており、各構成物質は,応答可能な周波数が異なるため、結果的に誘電率には周波数依存性(誘電分散)が観察されます。 このことは、低周波で大きな誘電率が得られた物質でも、高周波では誘電率 が低下してしまう可能性があることを示しています。
デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?(終わり)
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