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ケーブル物語:デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?(その2)

 

前回のブログで、S/PDIF規格の説明とデジタル伝送に於いては、致命的なエラーは生じていないこと、☚デジタルデータは、劣化しないと言えなくも無い?という事を踏まえた上で、ジッターに関しては、アナログ信号(連続量)であることDAC回路の時間軸は入ってくるS/PDIF信号に追従していますから、音質はS/PDIF信号の時間軸の通信品質で決まることがわかりました。

つまり、デジタル的にビットエラーは起きなくとも、DACでD/A変換される前のデータがケーブルの通信品質や周辺のノイズを受けることでDACの同期タイミングが影響を受けて正しくD/A変換ができないことになります。

S/PDIF転送はビットパーフェクトであってもケーブルで発生する伝送ジッター(時間軸の揺らぎ)はアナログであるため周辺ノイズやケーブル自身の微小振動の影響も受けています。

更にS/PDIF転送は、システムアーキテクチャ的にも宿命があり、DAC側で必要になる(SystemClock)を転送する手段が用意されていないためPLL(Phase Locked Loop : 位相同期回路)により同期信号を128倍もしくは256倍に逓倍してSystemClockを作り出す必要がありました。

PLLで256倍もの逓倍をすることは、わずかなジッターでも拡大されて無視できない値になり5億分の1秒でも影響があることが分っています。このことがデジタルケーブルで音が変わる最大の要因です。

音質劣化の最大要因は、デジタル転送部分でなく、デジタルケーブルで伝送される伝送ジッター(アナログ的な時間軸の揺らぎ)の変動分をPLLにより拡大している点にあります。

したがって、デジタルケーブルが、現在のシステムアーキテクチャで使用される限り、デジタルオーディオの音質はケーブル伝送ジッターに依存することになります。

以上の点を具体的にまとめると以下のとおりです。

①オーディオ特性に直接影響を与えるのは、デジタルオーディオのマスタークロックである。

このクロックは、D-A変換回路やD-AコンバータIC動作に用いられ、PCM信号の基準サンプリングレート(fs)に同期している必要がある。

D-AコンバータICの変換精度(オーディオ特性)は、このオーディオマスタークロックのジッターに影響される。

②S/PDIFの伝送クロック上のジッターは「伝送ジッター」であり、オーディオ機器内部のクロックとは、直接には関係無い

“クロックジッター”の種類は主に3つある。
1)タイムインターバル・ジッター
 クロックの理想タイミング・ポイント(立ち上り/立下り点)からの誤差

2)ハーフピリオド・ジッター
 クロックの理想半周期(half period)からの誤差


3)ピリオド(周期)・ジッター
 クロックの理想周期(period)からの誤差

このうち、D-A変換性能に直接影響するジッターは、ピリオド(周期)ジッターである。
さらには、周期をカウントするにはクロックの立ち上がりエッジ間周期を採用する場合と、立下りエッジ間周期を使う場合があるが、D-A変換性能に影響を与えるのは立ち上がりエッジ間の周期ジッターである。
すなわち、デジタルオーディオにおいて「クロックジッター」を表現する場合は、「オーディオマスタークロックの立ち上がりピリオド(周期)ジッター」である。立ち上がりである理由は、一般的なD-AコンバータICの変換精度に影響するクロックは、立ち上がりタイミングのみで決定されていることによる。☚仕様です。

CDプレーヤーやケーブルなどアクセサリで音が変わる理由は、CDの読み取りなどデジタルビットの影響は一切なく、デジタルをアナログに変換する際のジッターの差異と、最終的なアナログ出力に影響を与えるアナログ回路側の影響である

■デジタルオーディオは、すべてがデジタルではない!

最初に理解すべきことは、デジタルオーディオは完全に「デジタル」ではないということです
タイミングが重要である理由は、サンプリング理論では、出力サンプルが最初にアナログからデジタルに変換した正確な時間と一致することが義務付けられているためです。☚仕様です。
この原則に違反すると、歪みが発生します。

DACを駆動するタイミングを完全に正確にすることはできません
ある程度の変動は常に存在します。これを「ジッター」と呼びます。
これは、DACへのタイミングソースが理想値からどれだけ変化するかの測定値です。
ジッタ-の影響は、その振幅(振幅)、周波数(ジッタ-とソースオーディオの)、およびスペクトル/波形(変動の仕方)によって決まります。

ジッターの音楽への影響は、音楽のすべてのトーンを変調することです。
これらは正弦波ジッターを2つの歪み積を生成する信号としてモデル化できます。
1つはジッターとソース周波数の合計で、もう1つは差です。
 DACのタイミング変動が5億分の1秒を超える場合、オーディオサンプルの1ビットを圧倒するのに十分な歪みが発生します。
※ケーブル物語:デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?(その3に続く)

ケーブル物語:デジタルケーブルで信号は劣化するでしょうか?その3へ

(ここまでの記述は、モニオ氏のブログを基に私が要約しており、その原文は本田雅一氏の記述からの引用のようです。更にその原文は英文を翻訳したものです)

https://www.monionoheya.com/2020/10/hdmi.html ☚こちらが、要約する前の原文です。こちらで論じているのはHDMIとS/PDIFの比較ですが、私の要約はS/PDIFに絞り込んで要約しています。なお、この中にはUSB転送については論じていません。


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