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BELDEN 1874AフラットケーブルをCat6スタンダードタイプに組み替える

 








今回,お問い合わせいただいたLANケーブルは、Linnのネットワーク機器に使用するという事で、徹底的にLan cat6の規格を遵守して最高峰を狙います。Linnではアン・シールドのCat6aを推奨しています。

弊社既発売のLANケーブルはBELDEN 1874A(フラットケーブル)の中味のワイヤーのみを分解して取り出し、独自のツイスト方法で組み立てたものでしたが、今回は、cat6の十字介在のLANケーブルを分解して1本1本テフロン被覆されたBELDEN1874Aに置換しながら、テフロン樹脂で発生する静電気を逃がし中和するために、綿100%の凧糸をコルデル構造で巻き付け、さらに低誘電率の架橋ポリエチレン熱収縮チューブを180℃で熱収縮、自然冷却後にPET(ポリエチレンテレフタレート)のメッシュを、今回は3重に被せて締め上げます。
最後にモジュラープラグを圧着して、導通テストが通過すれば完成となります。




BELDEN 1874A(フラットケーブル)は、通信ケーブルとしては世界最高峰ですが、フラットケーブルのため振動対策が十分とは言えません。また、フッ素系樹脂の被覆は誘電率は他の高分子系の材料より低く優秀ですが高分子系樹脂の静電気を回避することはできていません。そのため、振動対策と静電気を中和する目的で綿100%の凧糸で締め上げることとしました。
手間は掛かりますが、現在考え得る最良のケーブルになると思います。

新規採用のRJ45プラグについて
今回圧着工具の不具合で予定していたRJ45プラグが駄目になり、急遽仕様を変更して、AMPCOMの圧着工具不要のRJ45プラグを使用することにしました。



■LANケーブルで音が変わるのは何故か?                       
ここでLANケーブルで音が変わると言われている事実があります。             これは、どういう事でしょうか?  LANケーブルに流れる信号はTCP/IPというプロトコル(通信規約)のデジタル信号です。                                                    
TCP/IPでのデータ抜け、データ化けは無いので、LAN上のTCP/IPデータは、ジッターとは関係のないデータです。したがってNASによって デジタルデータが変わる事(BIT化け)はありませんが、「NASが出すノイズがLANケーブルを伝わってネットプレーヤなどの機器に影響する」と考えられます。また、ケーブル(電線)に電流を流すと同時に磁界と電界が発生し、なんの対策もしていないケーブルでは、これが周辺機器にノイズとなって悪影響を及ぼします。つまりケーブルは、周辺からのノイズを拾うだけでなく、ケーブル自身が周辺にノイズをまき散らしているということを考慮しなくてはなりません。デジタル系とアナログ系は、極力距離を離したりツイストやシールドを適材適所で工夫して対策する必要があります。                                       
                          
結局、LANケーブルで音が変わるのは、S/PDIFやUSBのケーブルのような誘導ジッターが原因では無く、LANケーブルが拾うノイズやLANケーブルから輻射されるノイズがアナログ回路に影響を及ぼし、結果として音が変わるという事になります。                                                           
この対策として考えられることは、シールドされたSTPというツイストペアを使うことですが、アースがルーターやハブなども含めて完全な状態のアース環境でなければシールド自身がノイズのアンテナになりノイズをため込んでしまい動作が不安定になるため、 Linnで は、シールドしないアンシールドのLANケーブルを推奨していると思われます。 これも、一つの見識であると思います。                                         
Cat 6aのケーブルの製作段階で出来る留意点は、正確なツイストペアと振動対策、静電気除去や、モジュラープラグを実装する上で必要以上に、より戻しを行わずツイストピッチを維持することで、特性インピーダンスの不整合を回避してコネクター部分での信号反射を回避する必要があります。                               
T568B:ストレート結線















                                      
                                        
                                                         



コメント

  1. お客様に送った試聴機で2本が認識しないという不具合が発生しLANテスター(簡易版の導通チェック)を通過しただけでは、検査として不十分であることが分りました。原因はさまざまあると思いますが今回のケーブルが機器側で認識出来ないという不具合は、フラットケーブルを分解してスタンダードタイプにワイヤーを置換する段階で特性インピーダンスが基準から外れたためと推測しています。それで、ケーブルをスタンダードタイプに組み替える際にオリジナルのCat6aと有効長が変化しないように慎重に組み立てることと、各ツイストを纏めて全体を捩る時のピッチも特性インピーダンスを狂わせる原因になると考えてケーブルの末端でツイストペア毎の長さをオリジナルのツイストペアと同じになるようにしました。更に、ツイストの撚り戻しが可能な限りすくなくなるように実装方法を工夫して組み上げ、試聴機サンプルを送ったところ、無事にケーブルの認識が出来、現在試聴評価中です。ケーブルの接続方向も音質に影響がありますが、これは聴いて確認していただくのが確実です。原因としては、よく言われる導体の電気の通りやすさに方向性があるというよりケーブルの構造に依る、ノイズ輻射のパターンが変わるためであろうと考えています。LANケーブルの厳密な測定器は200万円以上もするので代替できる検査方法を検討中です。いずれにしても簡易LANテスターでの導通スキャンだけでは不十分であることがわかりました。

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  2. 本LANケーブルは、その後も改善が進み仕様を一部変更しました。
    2021-12-24現在の仕様は、以下のとおりです。
    ①凧糸によるコルデル構造を廃止しました。

    ②テフロン被覆の上に架橋ポリオレフィン熱収縮チューブを分割して束ねています。

    ③分割して一部が露出したテフロン被覆に直接オーガニックコットンのスリーブを被せて静電気対策しました。

    ④PETのメッシュスリーブで3重に締めています。

    ⑤モジュラープラグを歩留まり向上と生産性向上から貫通型の樹脂製(シールドなし)に変更しました。

    以上の措置は、特性インピーダンスをオリジナルのケーブルに近づけるためです。

    本LANケーブルは、デジタルケーブルHS-LINK(ACCUPHASE)の代替品として動作確認できました。既に1本が弊社ユーザー様で使用されています。

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