(開発目標)
情報量を変えることなく中域、中低域の膨らみと、若干抑えた感じの音作りのXLRケーブルはできないものでしょうか? という問い合わせを戴きました。
試聴されたケーブルはヨルマデザインの「 ユニティ」というバランスケーブルです。
驚くほど艶っぽく色っぽい音☚弊社の場合のレシピでは、「艶が載るというか再現性を高める」には、先ず線径の選択とリッツ構造、絶縁被覆に留意する必要があります。
方法は2通り考えられますが、実装する上では、ケーブル長による制約があります。プリ=パワーアンプ間の必要な長さを教えてください。それにより実装方法が変わります。2m以内であれば0.35mmブラックエナメル絹二重巻きによるツイストクワッド二重螺旋式の56芯リッツ構造で実装可能です。3mを超える場合は、0.5mm純銀線による16芯から32芯リッツ構造フッ素絶縁二重螺旋式で実装可能です。どちらが良いかは試作してみないと分かりません。
JORMAUNITY,XLR,1m,1.0m
(仕様)
誘電体 無色高純度テフロン☚やはり、テフロンですね。テフロンは艶が載る傾向で好みの分かれるところですが、選択可能です。
今回は、テフロン同様のフッ素系絶縁被覆の単線ワイヤーを使用します。(テフロンはデュポンの商品名)
導体材質 純度 99.999999%銅☚8Nと呼ばれる無酸素銅ですが、これは一般には入手出来ません。
(酸素及び他の不純物を除去)
導体構造 セラミックファイバーを芯にした多芯線構造☚不明。セラミックファイバー(繊維)を芯にした単線6芯が考えられます。XLR3芯構造とすると片chあたり18芯です。
クリンピング・スリーブ材質 ポリオレフィン☚弊社でも良く使用する材料で誘電率が低く絶縁耐圧も高いです。弊社の電源ケーブルで使っています。
シールド材質 錫メッキ銅☚シールドは一般的な編組シールドと考えられます。弊社のケーブルでは、1m仕様であるならば銀メッキの編組シールドも選択可能です。
メッシュ材質 ポリエチレン(PET)☚弊社とほぼ同等の材質(ポリエチレンテレフタレート)です。
コンダクター数 3 (+,-, GND) x 1pc. (1チャンネルにつき)☚一般的な3芯構造です。弊社の場合は基本構造で8芯ノイズキャンセル構造です。原理的に十分なノイズキャンセル効果を持つためシールドは不要ですが、試作ではシールド有と無しを製作します。
コンダクター断面積
(Conductor 0.75mm2/pc) 3 (+,-, GND) x 0.75mm2 (1チャンネルにつき)☚単線か撚線かが不明ですが、音質評価傾向から判断すれば撚線であろうと考えます。単線ではもう少し細くしなければ倍音成分や余韻の再現性は出ません。あるいは、セラミックファイバーを芯にした導体構造との記述から0.75mmを6本周囲に配置したリッツ構造かもしれません。
シールド断面積 4.2mm2 , RFIとEMI 除去率約96%
※上記と互角性能を得るには以下の組み合わせが候補となります。
ワイヤー:0.26mmか0.32mmの無酸素銅の銀メッキ単線フッ素絶縁による双方向二重螺旋式ツイストクワッド
最小構成は16芯から32芯
技術試作を2,3種類製作して仕様を詰めてから見積もり決定します。
10月中旬以降?になります。
(1次試作:2023-10-09)
0.26mm無酸素銅+銀メッキ単線を入手して試作開始
ツイストペア①
ツイストペアを重ねてツイスト
重ねてツイストすることで4芯のリッツ構造とする
4芯ツイストのリッツ構造
オーガニックコットンスリーブを被せて2本用意し更にツイストします。
この段階で8芯になります。
逆回転二重螺旋により16芯+グラウンド線4芯
2023-10-18水曜日
XLRコネクター入荷
1次試作完成しました。
-----続く。
発注者です。今回もよろしくお願いします。
返信削除実は、9月の下旬に、私とほぼ同じシステムを使われている方のご自宅を訪ねる機会がありました。
どのような音を楽しまれているのか、非常に気になっていたのですが、第一音を聴いていきなり魅せられてしまいました。
我が家のシステムは、フィディリティゲート(以下FG)のケーブルでほぼ固められており、躍動感、空間再現を特徴とした音になっていて、この音に満足していました。
それが、抽象的な言い方ですが「艶と色気」を感じる音に接し、カルチャーショックを受け、訪問の翌日、社長さんにご相談した次第です。
実は、訪問から1ヶ月近く経過していますが、なかなか耳をリフレッシュできません。
現在ラインナップされているアナログ系のFGケーブルの多くに私の意見も取り入れていただいていますが、かなりモニター調な感じのするその音の魅力を、少し角度を変えて追求しても魅力的な音になるのではないかと思いました。
訪問した際「薄化粧を施す」という印象的なアドバイスを頂いたのですが、これを取り入れることができないかと考えています。
このケーブルの使用箇所は、これもアドバイスを頂いた、どの信号にも影響のあるプリ→パワーアンプ間のXLRケーブルとしたいと思っています。
相談後、すぐにメール返信及び、ショップでの打合せで社長さんのお考えを確認さえていただき、制作(試作)の依頼をしました。
ブログでの進捗状況も拝見していますが、依頼の意思伝達は、ほぼ完全でここからどのような音が出てくるのか楽しみでなりません。
コメントをありがとうございます。お待たせして申し訳ありません。1セット分のケーブルは完成しているのですが、XLRのメスコネクターが欠品しており確認したところ11月中旬との回答でした。止む無く試作が進まない為同一メーカーの色違い(光沢あり)を注文しました。商品は全く同じですが仕上げが異なりメスが光沢ありオスが光沢無しで試作することにしました。今週中には1セットが実装できると思います。もうしばらくお待ち願います。
削除昨日、XLRケーブルの試作機の試聴をするために、ショップへ行ってきました。
返信削除現在使用しているXLRケーブルを持ち込んでの比較試聴です。
使用箇所は、アキュフェーズDP-750CDプレーヤーからC-3900プリアンプへの接続です。
これまで使っていたケーブルは、聴き慣れていていて、なおかつショップに機材をほぼ私の部屋と同じものにしてもらったため、違いがとてもよくわかる試聴でした。
その上で、今回のケーブルを聴いたのですが、音質についての変化以上に空間表現に驚きました。
このメーカーのケーブルの共通の特徴である、高いSN比による高解像度と定位感、左右上下前後に音を広げてくれる様は、サラウンドシステムのような錯覚を覚えました。
それでも、今回の最大の目標である「艶と色気」の表現は希薄、というより高解像度な音の出方によりボーカルがクッキリ浮かび上がってしまい、感性に訴えかける音ではなく、これまでのケーブルより写実的な音になっています。
今後のエージングにもよると思いますし、試作機ということでケーブル本体の微振動を抑える通常五枚重ねのコットンスリーブが一枚で、さらにほとんど締め上げをしていないとのこと。
このせいか、若干オーバーな音の出方をがることもありましたが、トータルで私の基準なら及第点以上の出来でした。
さらに、今回のデモ機は16芯のケーブルでしたが、制作してもらうのは32芯にしました。
価格も倍になりますが、過去に4芯で試聴した純銀スピーカーケーブルを16芯で制作してもらった時に大幅な向上があったのを経験しているため、この時のような変化を期待しています。
その後、デモ機は貸出していただき、自宅でエージングを続けていますが、既に昨日との差を感じ取ることができます。
オーバー気味な音の出方が抑えられつつあり、聴きやすくなる傾向にあります。
また「色気」というより、ボーカルに「艶」と感じられるような変化も出てきました。
これは、抽象的で感覚的な主観に過ぎませんから、今後の変化を期待しつつ注目していきたいと思います。
>「過去に4芯で試聴した純銀スピーカーケーブルを16芯で制作してもらった時に大幅な向上があったのを経験しているため」について、補足説明させていただきます。スピーカーケーブルは片chあたり8芯です。16芯ではありません。16芯が良いのは分かっていますが、価格や作業時間の関係で未だ製作していません。本来であればスピーカーケーブルは32芯の方が更に良いのです。XLRの32芯は片ch分のケーブルが完成したところで材料切れです。本日1リール100mを追加発注しました。
返信削除進捗状況は、その2(32芯)として公開します。